30kmを順調に通過し、レースは佳境に入る。
ベテランランナーたちの誰もが
「30kmからスタートだと思え」とアドバイスをする。
つまり30km過ぎをどう走るかが、
マラソンランナーとしての真骨頂なのだろう。
これから日比谷通りから第一京浜に入り、品川を折り返し
丸の内ゴールへと向かう。
アスリートモードにスイッチを切り替える!
30km以降スタートダッシュよろしく5分20秒のラップを刻む。
ペースが一気に上がる!
ぐんぐん前へ進み、前方を走るランナーが自分に吸い込まれてくるような
錯覚さえ感じた。「よし!このままゴールまで行ける!」
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東京タワーが右手に見える増上寺前、プロのカメラマンがレンズを向けている。
「よーし、その商売に乗った!」とポーズを決める。
まだまだ余裕あるぞ。
しかし、35km過ぎ体の感覚が変わってきた。
ペースがガクッと落ちた。
鉄下駄を履いているかのように足が重い。
太ももとふくらはぎが鋼のように硬直してきた。
前半あっという間に通り過ぎて行った1kmごとの看板が、めちゃくちゃ遠く感じた。
意識も遠くなって声援も聞こえない…
「30km過ぎこうなるのか…」とフルマラソンの怖さを知った。
立ち止まったり、蛇行しながらもがき苦しむランナーが多くなってきた。
みんな苦痛に耐えながら「完走」というメダルを目指して必死に自分と戦っている。
「苦しいのは自分だけではない、タイムなんかどうでもいい。絶対完走してやる!」
こうなると限界への挑戦、自分との戦いだけだ。
![](https://tashimaya-tatami.com/wp-content/uploads/2019/03/s_IMG_0931.jpg)
気力を振り絞りながら、ようやく丸の内仲通りに入ってきた。
自分とは縁遠く高級ブランドショップが並ぶスタイリッシュな通りだが、
ヨレヨレで走る田舎者の私を待ってくれていた。
「ハナガサ!」「ヨネザワ!」沿道の声援が嬉しくて
涙があふれた42km地点。
人の声と流れる涙の温かさを感じ、力が沸き起こってきた。
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感激のフィニッシュ!
ネットタイム4時間8分47秒(スタートライン~フィニッシュまでのタイム)
グロスタイム4時間30分59秒(スタート号砲~フィニッシュまでタイム)
14834位、スタートから1万5千人以上を抜いてきた。
「やったぜ完走!」
「ありがとう東京!」
「ありがとうハナガサ!ヨネザワ!」
フィニッシュ後もずっとずっと涙が止まらなかった。
マラソンてこんなに苦しくて難しくて楽しくて、そして温かい…
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「マラソンのこともっと知りたい!」
東京がひとつになった2019年3月3日、
「サブ4」という目標のスタートラインに私は立った。