あこがれの東京マラソン。戦いは前日から始まっていた。
ゆりかもめでお台場へ、受付会場到着。この中には出場ランナーしか入れない。
ここに並んでいるランナーたちは12倍もの倍率を潜り抜けた幸運の猛者たちだ。
腕に覚えがありそうな猛者たちは、緊張感を漂わせながら寡黙に順番を待っている。
「もっと楽しくやろうよ~」と言いたかったが待ち時間の経過とともに
その緊張感にのみこまれていく自分がいた。
着ぐるみやコスプレをして走るお祭りムードのあの東京マラソンとはまるで違う
不思議な雰囲気がここにはあった。
セキュリティバンドなるものを手首に強制的に巻きつけられ、
顔認証のために写真まで撮られた。なんだか物々しいことになってきたぞ。
しかし、大会スタッフのはたらきは素晴らしかった。
無駄のない誘導と手際よい応対、そして明るい雰囲気。
プログラムやナンバーカードが入った袋を
笑顔のおねーさんから手渡され「がんばってくださいねー」
この一言でこれまでの変な緊張感が一瞬で吹き飛んだ。
「明日は本当に走るんだ!東京とひとつになれる!」
やっと気分が盛り上がってきたぜ。
なんて単純なんだ…
受付のその先にはマラソンに関連した企業ブースが立ち並んでいて、
試供品を配布したり、商品PRを賑やかに行っていた。
特に目新しいものがあるわけでもなく、「企業の宣伝は上手だな」と私は冷静に素通り。
競い合うようにPR商品を買い漁る寡黙な猛者たちを横目に
「明日の勝負は俺がもらった」とつぶやいたが、意味不明。
ん?とても静かなブースだ。
わが母校のブースだった。なんだこの人気のなさは…
「強面の学ラン着た学生が陣取って何か威圧しているのか!」一瞬構えたが
「いやいや時代は変わったはずだ」と思い直し
先輩風を吹かせてブースに入ってみた。
私はいつもより胸を張り「おう!俺も士舘(シカン)出身なんだけどっ」
「おおっ押忍!せんぱいっっ!!!!!!!」という直立不動の国士舘生を期待していたが…
「あ~そうなんですね~僕たち明日の大会のAED協力していますぅ」
スーツ姿の優しそうなイケメン学生がスマートに対応してくれた。
やはり時代は大きく変わっていた…
素晴らしいじゃないか我が母校!
東京マラソンの救護を学生たちが200名体制でサポート。
この社会貢献活動は今回で13回目になるらしい。
世のため人のため尽くす人材、それが国士。誇りに思うぜ国士舘大学!
「よし、明日は米沢の士となり押忍の精神で戦う。国士舘万歳!!!」
そう決意し、お台場を後にした。
(レース編へ続きますが、しばらくお待ちくださいね)